Q.遺言を書きたいのですが、どうしたらいいでしょうか。
市販の書籍を参考に書いてもいいですか。
司法書士に遺言を依頼する、とは、司法書士からその書き方を教えてもらったり一緒に書いたりしてくれるという意味なのでしょうか。
司法書士に遺言を依頼するメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
A.遺言には一般的に、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
個別の状況にもよりますが、おすすめするのは公正証書遺言です。
司法書士に依頼して公正証書遺言を作成することをおすすめします。
テレビなどによく登場するのは「自筆証書遺言」です
テレビ番組などで「ワープロで書いた遺言は有効か」「書いた日付がない遺言は有効か」などのクイズを見かけることがあります。遺言についてこのイメージが強く、「決まりにそって自分で書くもの」である、と思っている方も多いのではないでしょうか。また、市販の書籍だと、法律上の遺言と、単なる手紙(エンディングノートという名前の場合も)がごちゃまぜになっているケースもみかけます。
法律上の遺言とは、死亡後の財産が誰のものになるかを明確にしたり、法律をきちんと作用させたりするためのものです。
それ以外のこと、たとえば「兄弟は仲良く」などを残された方のために記しておきたいという気持ちもあるでしょう。その場合は、法律上の遺言と私的なお手紙を分けて、私的なお手紙の方にご自由に書かれたほうがよいと思います。その方が明確になり、残された人にとってもわかりやすくなって手続きがスムーズになります。
自筆証書遺言の注意点
テレビ番組などで紹介する遺言はたいてい「自筆証書遺言」です。自筆証書遺言ももちろん法律の決まりにそって書かれたものであれば有効なのですが、いろいろと面倒な点があります。
まず、自筆で書かなければなりません。これがなかなか大変です。一部の例外を除き、形式が厳格に定められているためです。
また、亡くなった後にその遺言書を家庭裁判所に提出してその「検認」手続きをしなければなりません。検認は簡単に言えば、相続人の立会いのもと、方式や状態を確認して後日の偽造などを防止し保存を確実にするための手続きです。
さらにその検認手続きを経たとしても有効とは限りません。不十分な内容があると、遺言を残した人の希望通りにならずトラブルになることがあります。遺言書を使う場面においては、すでに遺言した人は亡くなっているため、修正をすることはできません。そのため、前もってきっちり準備しておくことが大事です。
なお、この検認手続きですが、令和2年7月に新しく始まった、法務局における自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は不要になります。 なおこの制度も司法書士がお手伝いすることができます。http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
とはいえ、専門家が関与しないで作成された自筆証書の内容は、法務局も有効かどうかなどをチェックしてくれるわけではありません。いざ使う場面になって使えないとわかるようなことがあると、困ってしまいます。
たとえば、遺言書の記載における人や物の特定などです。「遺言書には『長女』とあるが、実際の長女は生まれてすぐに亡くなっていて、戸籍上の次女を便宜的に長女と呼んでいた」のようなケースです。この場合、遺言書は戸籍通りに解釈するので、「遺言書における長女はすでに死亡している、ではこの遺言書をどう解釈するか…」など迷ってしまうことがあります。
司法書士などの専門家が関与する場合は、作成時に戸籍や財産に関する資料等を取得してしっかり確認しますので、そのような心配がありません。
他にも自筆証書遺言のデメリットとしては、ルールが厳密でそれに従わないと無効になってしまうこと、紛失や発見されない可能性があること、変造や破棄のリスクがあることなどが挙げられます。
公正証書遺言とは
そのようなデメリットを解消するのが、もう一つの遺言の方法である「公正証書遺言」です。公正証書遺言は、公証役場において公証人に作成してもらいます。
そのため、自筆証書遺言とは異なり、形式の不備等で無効になることがありません。また、公正証書遺言は公証役場で保管されるので、紛失や偽造などのリスクもありません。証人2名も立ち会います。
さらに、家庭裁判所の検認が不要で、比較的すぐに相続手続きができることもメリットです。所定の手数料がかかるものの、非常にメリットが大きい制度です。詳しくは日本公証人連合会のウェブサイトをご覧ください。 https://www.koshonin.gr.jp/business/b01
「では、公証役場というところに行って、『遺言を書きたい』と言えばいいのでしょうか?」
公証人は、あくまでも文字通り「公証」することが業務であり、こう書いてほしいという内容に従って遺言を作成するのが仕事です。また遺言以外にもいろいろな公証業務を行っていて、人数が限られている(日本全国で公証役場は約300箇所あり、公証人の数は500名程度)でとても忙しくされているので、財産状況や親族関係など詳しく聞き取って、細かくアドバイスしてくれるとは限りません。公証人も法律のプロではありますが、公証が主な業務の国家機関です。
司法書士にご相談ください
それに対し、司法書士は依頼者側に立ち、よりそいます。司法書士は、あなたの希望や思いを聞いた上で、文面を考えたり、必要書類を取り寄せたりします。内容を細かく検討し、そのうえで公証人と打ち合わせをして事前準備を行い、スムーズに公正証書遺言を作成するための一切を行います。戸籍の取り寄せなどもできるので、依頼者のあなたが役所などに出向く必要もありません。
そのようにして書かれた遺言書について、公証人に遺言内容を伝え、最終的に公証人が作成することで、公正証書遺言が作成されます。司法書士は、この公正証書遺言に関して最初から最後までお手伝いすることができます。遺言作成時の証人としても立ち会い、当日もお手伝いいたします。
もちろん当事務所も公正証書遺言作成のためのこのような一連の業務を行います。相続税など考慮したほうが良いケースもありますので、当事務所は場合によっては税理士さんと連携して進めることも可能です。
実際にあったケースとして、ご自分で公証役場に行かれて遺言を作成したところ、記載すべき財産が漏れてしまっていたことがありました。書類に出てこない財産があることが後から判明することもあります。このような場合も、当事務所にご相談いただければ、事前に気づくことが可能です。特に山や農地、共有道路などは漏れてしまうケースが多く見受けられます。
司法書士は法律のプロです。相続、身分関係、財産関係などの紛争を予防するアドバイスをすることができます。それらに加えて不動産登記のプロなので、不動産の名義手続などにも適切なアドバイスを提供します。相続に関連した生前贈与や任意後見契約(今のうちから財産の管理人を決めておくこと)、死後事務委任契約(死後のことを任せること)、その他の法律問題にも対応します。
意図した通りの効力をもった遺言にするためには、司法書士に公正証書遺言を依頼し、相談のうえで作成することをおすすめします。
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